証言集=『黄土地上来了日本人』刊行


 一つ前のエントリーで、山西省臨県の農村(かつて三光作戦の被害に遭った村)に移り住み、村の老人たちから抗日戦争中の記憶を聞き取りしている大野のりこさんについて紹介しましたが、その聞き取り調査の結果が本になって刊行されました。

 題名は『黄土地上来了日本人』。東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センターより刊行。
 詳しくは著者のブログの↓のエントリーを参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/maotouying/20110612


 残念ながら私はまだ本書を読めないでいるのですが、著者の過去のエントリーを元に蛇足的な補足をいくつか。


 『黄土地上来了日本人』は『黄土に土地に日本人がやってきた』という意味で、これは抗日戦争中にやってきた日本軍を指すと同時に、60年後にその地を訪れ老人達と同じ場所に住みながら聞き取り調査をする著者のことをも指しているのではないかと思われます。


 内容はおそらく三光作戦の直接の被害者や肉親を殺された人々の証言のみならず、日本軍にさほど悪印象を持っていない人や元八路軍民兵だった人などさまざまな立場にいた人の記憶が集約されていることでしょう。
 本書は、今まで文字資料中心の歴史から排除されてきた人々(文字の読み書きができない人々)+日本で出版され中国当局の干渉が少ないと思われる点+地域一帯の老人たちの記憶をすべて網羅しているため多角的な抗日戦争像が描けること+元八路軍民兵など日本の研究者から無視されがちな戦闘員の記憶も収録していること・・・・・・などの点によってたいへん意義のあるものとなっていると思われます。


 しかし、残念なことに諸事情*1により、日本での出版ですが諸事情により全文中国語での出版となりました。
 もっとも、日本語訳やネットでの公開の計画もあるようなので、中国語読めないけど興味ある人は注目していてください。
 

 著者の一つ後のエントリーによれば、各地の県立図書館に寄贈されているようです。館外貸し出しはしていない可能性が高そうですが、中国語読める方は図書館内で読むことができます。


 それでは、まだ自分も読んでいない本を紹介するのもなんですが、密かに著者の活動を応援していた者として、取り急ぎお知らせしました。