地方志に見る抗日戦争(3)

 さて、(2)で示した基準に基づいて、なぜこの8地域を選んだかについて。



山西省
 

特殊な地域→武郷県
 山西省の南東部位置する長治市*1に属する。山西省と河北省を分ける太行山脈のふもと。
 当地には抗日戦争の全期間を通じて八路軍の総司令部が置かれた。八路軍の抗戦の心臓部であり、極めて重要ではあるが、同時に特異な地域とも見なせる。



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典型的な地域→臨県
 山西省西部の呂梁市に属する。同一省内で地域が偏らないようもう一つの県は、山西省の西側から選ぶことにした。山西省の他の地域と同じく、当時は貧しく立ち遅れた黄土高原の地域。典型的な山西省の抗日闘争が調べられると思われる。また、当地ではある日本人女性が住み込んで三光作戦の調査をしており、その印象も強くて対象とした。


記憶にであう―中国黄土高原 紅棗がみのる村から

記憶にであう―中国黄土高原 紅棗がみのる村から



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河北省


・特殊な地域→安新県白洋淀区
 河北省のほぼ中央部に位置する安新県の西部にある地域。「淀」とは浅い湖のことであり、その名の通り当地には無数の小さな湖と水路がある。漁業が盛んで、その美しい風景のため現在では観光地になっている。
 抗日戦争中はその特殊な地形を利用して「水上遊撃隊」という独特の抗日闘争が行われた。「水上遊撃隊」は全国的に有名であり、個人的にも興味はあるが、河北の抗日闘争としては特殊な形態であることは否めない。


参考
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典型的な地域→順平県
 安新県と同じく保定市に属する。近接地域を選ぶのはなるべく避けたかったが、「順平県志」の記述が非常に詳細で体系的であり、資料として価値が高いので対象に選んだ。その闘争形態も河北の他の地域とさほど違いはなく、むしろ最も典型的と言えそうである。



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山東


特殊な地域→棗庄市
 山東省の北部に位置する棗庄市の中心。炭鉱の街。
 抗日戦争中は他の華北の都市部と同じく、日本軍の完全な支配下に置かれた。このような都市部では抗日闘争は低調になるのが一般的だが、当地では「鉄道遊撃隊」などの活動が活発だった他、周辺でも闘争が行われた。「鉄道遊撃隊」のことに興味がある他、都市部における抗日闘争を調べる上でも対象に選んだ。ただし、このような地域はやはり例外である。



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典型的な地域→肥城市石横鎮
 山東省の中心部よりやや西よりに位置する泰安市に属する肥城市*2の村。
 「市」も対象にしたことだし、ここは「県」より下の「村」「鎮」レベルでも調べてみることに。「鎮志」を出している地域は少ないが、その中から比較的記述が充実している地域を選んだ。当地はこれといって特殊なことは起こっておらず、典型的な地域と見なすことができる。



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河南省


特殊な地域→該当なし。
 河南省は四省の中で最も知識が無い地域であり、どのような抗日闘争が行われ、どこが中心的地域であったかもわからない。加えた各地方志の記述も少なく、対象を選ぶことができなかった。代わりに地方志の記述が比較的詳しい2県典型的な県として設定した。


典型的な県1→安陽県
 河南省の南部、河北省と山西省に隣接する安陽市に属する。



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典型的な地域2→南楽県
 河南省南部、河北省と山東省に隣接する濮陽市に属する。



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と、この8地域を対象にしていくわけだが・・・さて、どんなふうにまとめていくか?

*1:中国の行政単位では「市」は「県」の上位

*2:「市」の中にまた「市」があるのがよくわからない