調査日記 失敗編1
最後、よく記憶がないほどどたばたしながらも、中国の大学図書館と市民図書館を利用しての資料収集も終わりを迎えた。
私は抗日闘争の資料を探していたわけですが、何と言うか、膨大な資料の中から限られた時間で探し出すのは宝探しのようでもあり、むしろこれ自体が一種の戦い(笑)のようであり・・・・・・や、本当きつかった・・・・・・。
特に私はどこかの大学や研究機関の紹介があるわけでもなく、一介の利用希望者として利用申請して、実質一人で資料を収集していたわけですが、それでも一介の(謎の日本人)利用者と図書館職員という関係で、図書館職員さんにもいろいろとお世話になりました。
そういう日々を振り返ってみると、私は歴史を調べていたわけだが、そういう「歴史を調べる」という行為もまたそれ自体が一つの歴史だったなぁ〜、ととりとめもなく思ってみたり。
というわけで(?)、簡単に調査の日々を振り返ってみる。
と言うより、以下、失敗の記録(笑)・・・・・・自分、どれだけ非効率的なんだよ・・・・・・という話し。
私の資料収集優先順位は
書籍の形をとった文献資料は、帰国した後でも(中国語であっても)日本の各大学や東京都立図書館に蔵書があれば、地元の公共図書館を通じて入手が可能だ。なので優先しなくてもいい。もちろん本棚をチェックしてどのような文献が刊行されているかはチェックしとく。
しかし、それに比べて中国語学術雑誌は日本では入手しがたい。なのでできるだけ集めておく。
そして最も日本で入手困難なのが地方志である「県志」。これは一冊一冊が最も短いものでも1000ページを超える。重さも二冊もあれば充分つけもの石の代わりになる。これも少しは日本国内にあるが、いくらなんでもこういう本を公共図書館に相互貸借で取り寄せてほしい・・・・・・とはとても頼めない。しかも、河北省各県の虐殺の記録を調べたい場合は、一冊ずつ「県志」を見ていかなければいけないが、河北省の県は172個*1あり、各県の虐殺の記録を調べるには一冊づつ当たるしかなく、そんなことはそれらが一箇所に揃っている場所(=中国の大学図書館)でしか不可能だ。
で、その「地方志」だが、大学図書館内の「特別保存室」にあった。ここの本は閲覧は自由だが、貸し出しも室外持ち出しも禁止。図書館にはこの部屋の外にセルフコピー機があって、必死に雑誌をコピーする私と設備保守の職員との間で「コピー機動かないんだけど!」「おまえが何言っているかわからん(←私の中国語発音がひどすぎて)」というやりとりが日々繰り広げられていたのだが、「地方志」に関しては保存室内のコピー機を使わなければいけない。
そのコピーだが、どうやらコピーを専門に担当する職員がいるらしい。まあ、貴重書や高価な書ばかりであるから、セルフコピー不可ということなのだろう、と思った。
だが、問題は、このコピー係のおじさんがいったいいついるのか、当初不明だったことだ(こういう時、日本だったら気軽に聞けることも、外国語しか通じない場所だと聞くこと自体が負担で、つい忌避して自力で調べてしまう)。それでも、そのうち何度も足を運ぶうちにコピー係の勤務時間が把握できるようになった。
だが、それよりも問題なのは・・・・・・
日本人が日本軍の中国人虐殺リストのコピーを中国人に頼むって精神的ハードルが高いよね
コピーを頼む際には氏名を書くので、私が日本人だってことはばっちり向こうにわかっています。
や、これは別に私の自意識の問題で、別に職員側からは何も反応はなかったのですが・・・・・・むしろなんか言ってくれたほうが精神的に楽だったかもしれない・・・・・・
で、少なくとも華北4省の8地域に関する資料まではコピーしてもらったのですが・・・・・・さすがに河北172県分の虐殺記録を頼むのは、私の精神がもたなかった・・・・・・。なので、すでにほとんど時間がないにも関わらず、私はこの172県分の虐殺記録を日本語に訳しつつ書き写すという無謀な挙に出た。
しかしこれがまた
虐殺事件多すぎて書いても書いても終わらない!
という事態に。
帰国までに多くても十数県ぐらいしか書き写せないか・・・・・・と悲観したのだが、ある日、驚くべき光景を見てしまった。
なんと学生の一人がセルフコピーをしていたのだ。
てっきり特別保存本だし、コピー専門係りはいるしでセルフコピー不可なのかと思い込んでいたら・・・・・・。慌てて職員に聞いたが、するとセルフコピーはまったく問題ないとのこと。
すでにこの大学図書館を私が使える期限はあと二日(しかも他にも収集しなければばらない資料もあるし、コピー代を係りのおじさんに払わなければいけないので、コピーできるのはそのおじさんがいる時間だけ、と多くの制約があった)
おいおい、セルフコピーOKだってもっと早く知っていたら、この数日、書き写すなんて非効率的なことはしなかったのに・・・・・・などと嘆いている場合ではない。
コピーの効率の良さに感嘆しつつ、残りの時間をフルに使って何とか40県前後の記録をゲット。
まあ、とりあえず及第点と思ったが・・・・・・この後、さらに驚くべき事態が・・・・・・。